画面にきたろうさんが映ると、その場の空気が少しだけゆるみます。
シリアスなドラマでも、緊迫したサスペンスでも、なぜか彼が出てくると独特の温度感が生まれる。これは演技がうまいとか下手とかいう話ではなく、きたろうさんという人がもともと持っている「空気を変える力」のようなものです。
俳優として、タレントとして、そしてコント集団シティボーイズの一員として。長年にわたって日本のエンタメを支えてきた、唯一無二の存在です。
中央大学からシティボーイズへ
きたろうさんは1948年8月25日、千葉県市川市の生まれです。本名は古関安広(こせき やすひろ)さん。中央大学文学部を卒業しているという、意外にアカデミックな経歴の持ち主でもあります。
彼を語るうえで欠かせないのが、コントグループ「シティボーイズ」での活動です。1979年、大竹まことさん、斉木しげるさんとともに、現代社会のナンセンスを独特の視点で切り取るコントグループを結成しました。
笑いの常識を覆すような不条理コント、知的でナンセンスな表現――お笑い界の中でもアート寄りの立ち位置を築いてきたグループです。このシティボーイズで磨かれた「脱力感」と「間」の感覚こそ、きたろうさんの俳優としての最大の武器になっています。
『仮面ライダークウガ』おやっさん役という代表作
きたろうさんの俳優としての代表作を挙げるなら、まず『仮面ライダークウガ』(2000〜2001年)の飾玉三郎、通称「おやっさん」役は外せません。
主人公たちが集う喫茶店ポレポレのマスターとして、作品世界に温かい居場所を提供する役どころでした。シリアスな戦いが描かれる特撮作品の中で、おやっさんの存在は視聴者にとっての安らぎでもありました。きたろうさんの脱力感のある佇まいが、この役にぴったりとはまっていたのを覚えている方も多いはずです。
『踊る大捜査線』『池袋WGP』——人気ドラマの記憶に残る脇役
きたろうさんは、時代を象徴する人気ドラマにも数多く出演しています。
社会現象となった『踊る大捜査線』(1997年)にはサラリーマン役で出演。また、宮藤官九郎脚本で話題を呼んだ『池袋ウエストゲートパーク』(2000年)では吉岡刑事を演じました。いずれも主役ではないものの、出演シーンが妙に記憶に残る――そんなきたろうさんならではの存在感が光る役どころでした。
映画でも個性を発揮
映画作品にも幅広く出演しています。
- 『南極料理人』
- 『殿、利息でござる!』
- 『忍びの国』
- 『ロマンスドール』
- 『水曜日が消えた』
- 『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』
時代劇からコメディ、風変わりな設定の作品まで。きたろうさんが出演するだけで、作品にちょっとした可笑しみと味わいが加わります。声優やバラエティ番組のコメンテーター、ナレーションなど、活動の幅は一つの肩書きでは語り尽くせません。
「クセが強すぎない」絶妙なバランス感覚
きたろうさんの演技の妙は、クセのある役柄を「クセが強すぎず」演じられるバランス感覚にあります。
完全に振り切ってしまうと作品全体のバランスを崩しますが、きたろうさんは独特の個性を保ちながら、作品の世界観に自然に溶け込ませる技術を持っています。シリアスな表情をしていても、なぜか少し可笑しさを感じさせる――そんな「不思議な空気感」は、コント役者と俳優の両方を長く続けてきた経験の蓄積によるものでしょう。
筆者が思う、きたろうの「いるだけで成立する」魅力
個人的にきたろうさんを見ていて感じるのは、「いるだけで画が成立してしまう」という稀有な魅力です。
多くの俳優は、何かを「する」ことで存在感を示します。けれどきたろうさんは、ただそこに立っているだけ、ただ一言つぶやくだけで、その場面に独特の味を加えてしまう。これは技術というより、長年かけて作り上げられた「キャラクターとしての説得力」です。
70代を超えてもなお、独自の魅力を保ちながら新しい作品に出演し続けている。派手な若作りをするわけでもなく、年齢を自然に受け入れながら独特の存在感を放ち続ける――こうした「いい年の取り方」を体現している俳優は、現代において本当に貴重です。
きたろうについてよくある疑問
本名と経歴は?
本名は古関安広(こせき やすひろ)さん。千葉県市川市出身で、中央大学文学部を卒業しています。芸名「きたろう」として長年活動してきました。
シティボーイズの活動は今も?
シティボーイズは1979年結成の長寿コントグループですが、活動ペースや公演の有無は時期によって変動します。最新情報は公式サイトやメンバーのSNSで確認できます。
最新の出演作を知るには?
映画.comやTVerのプロフィールページ、各種ドラマ・映画情報サイトで確認できます。
おわりに
きたろうさんは、主役として大きな話題をさらうタイプの俳優ではありません。けれど、こういう俳優がいるかいないかで、作品の奥行きは確実に変わります。
『仮面ライダークウガ』のおやっさん役や、最近の映画作品から、彼の独特な存在感に触れてみてください。「演技で魅せる」のとは少し違う、「いるだけで成立する」俳優の面白さが、きっと伝わるはずです。


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