「この人が出ると、画面に変な緊張感が走る」――吹越満(ふきこし みつる)さんには、そんな独特の存在感があります。
派手な二枚目でも、声を張り上げる熱血漢でもありません。けれど彼がフレームに入ると、それまでの空気がわずかにねじれ、不思議な可笑しみや不穏さが生まれる。コミカルな役でもシリアスな役でも、吹越満さんにしか出せない「異物感」のような魅力があるのです。
出発点は「ロボコップ演芸」——WAHAHA本舗時代
吹越満さんのキャリアは、お笑いから始まりました。
1984年に劇団WAHAHA本舗に参加。映画『ロボコップ』をモチーフにした一人芝居「ロボコップ演芸」で人気を博します。ビートたけしさんのものまねや、ヴァイオリンの音に合わせて納豆をこねるという珍妙な芸も披露していました。
このWAHAHA本舗時代に培われた身体表現とリズム感、そして「人と違うことをやる」精神が、後の俳優としての個性の土台になっています。1999年にWAHAHA本舗を退団し、俳優としての活動を本格化させていきました。
映画での評価——『冷たい熱帯魚』ほか
吹越満さんは、評価の高い映画作品に数多く出演してきました。
代表作の一つが、園子温監督の『冷たい熱帯魚』(2010年)です。実際の事件をモチーフにした衝撃作で、吹越満さんは緊張感あふれる演技を見せました。そのほかにも、『SF サムライ・フィクション』(1998年)、『友だちのパパが好き』(2015年)など、個性的な作品に出演しています。
商業的な大ヒット作よりも、作家性の強い作品で存在感を発揮するタイプ。これは、お笑い出身ながら「ただ笑わせる」だけに留まらない、表現者としての幅広さを示しています。
ドラマでも欠かせない存在——『特捜9』シリーズほか
テレビドラマでも、吹越満さんは数多くの作品で重宝されてきました。
『警視庁捜査一課9係』から続く『特捜9』シリーズ(2006年〜)には長く出演し、おなじみのキャストとして定着しています。そのほか『隣人は静かに笑う』『デカワンコ』『どんど晴れ』など、ジャンルを問わず多彩なドラマに顔を出してきました。
シリアスな刑事ドラマから、朝の連続テレビ小説まで。どんな作品に入っても、吹越満さんは自分の色を保ちつつ作品に溶け込む技術を持っています。
ソロ公演を続ける表現者としての一面
吹越満さんは、俳優業と並行して、1989年から『フキコシ・ソロ・アクト・ライブ』と題したソロパフォーマンス公演を、数年に1本程度のペースで続けています。
これは、WAHAHA本舗時代の「一人で表現する」精神を今も大切にしている証です。映像作品で求められる演技とは別に、自分自身の表現を探求し続ける場を持っている。この姿勢が、彼の俳優としての個性を枯らさずに保ち続けている理由なのでしょう。
筆者が思う、吹越満の「リズム」という武器
個人的に吹越満さんの魅力を一つ挙げるなら、それは独特の「間」と「リズム感」です。
同じセリフでも、吹越満さんが発するタイミングや、視線の動かし方、姿勢の作り方には、他の俳優にはない独特のリズムがあります。これはWAHAHA本舗の舞台で、観客の反応を肌で感じながら磨いてきた感覚でしょう。
「変な人」「ちょっと変わったキャラクター」を演じさせたら、吹越満さんの右に出る者はそういません。奇人・変人・異形のキャラクターを、嘘くさくならずに成立させられる――こういう俳優は貴重で、そうした役が必要な作品では真っ先に名前が挙がる存在です。
吹越満についてよくある疑問
WAHAHA本舗時代の代表的な芸は?
映画『ロボコップ』の動きを再現する「ロボコップ演芸」が有名です。ビートたけしさんのものまねなども披露していました。
プライベートについて?
私生活では、女優の広田レオナさんと結婚していることが知られています。プライベートを多く語るタイプではなく、作品で勝負する俳優です。
最新の出演作を知るには?
映画.comや映画ナタリー、キネマ旬報WEBなどの俳優情報サイトで確認できます。ソロ公演の情報は本人や所属事務所の発信をチェックするとよいでしょう。
おわりに
吹越満さんは、お笑いから出発し、唯一無二の存在感を持つ俳優へと進化した稀有な表現者です。
まずは『冷たい熱帯魚』のような評価の高い映画や、『特捜9』シリーズから、彼の独特な存在感に触れてみてください。一度意識して観ると、いろいろな作品で「あ、また吹越満さんだ」と気づくようになるはずです。


コメント